都市基盤整備事業推進大会
平成29年度 都市基盤整備事業推進大会
大会決議
全国街路事業促進協議会代表
青森県青森市長 小野寺 晃彦
皆様こんにちは。青森市長の小野寺晃彦でございます。決議文及び特別決議の朗読の大役を仰せつかっておりますが、青森市の都市整備の状況を簡単に御紹介させていただいた上で朗読に入らせていただきたいと思います。
正面のスライドに映しておりますのは、青森市が誇る日本一の火祭りでございます「青森ねぶた」でございます。
青森市の人口は約28万人でございますが、8月2日から開催されますこの青森ねぶたの期間中は約280万人、人口が10倍に膨れ上がるという本当に情熱的なお祭りでございます。ぜひ皆様も機会がございましたらお立ち寄りいただいて、その情熱を体験していただきたいということを御紹介申し上げて、私からの発表に入りたいと思います。
青森市は大変雪の多い街で、県庁所在地で唯一市内全域が「特別豪雪地帯」であり、人口30万人規模の都市としては世界一の豪雪都市といわれております。自然に積もっている雪の深さを積雪深と言いますが、過去10年間の最大積雪深の平均値は、1mを超えて104cmとなっております。累積の積雪量は毎年6mから7m、毎年30億円をかけて、これをすべて重機で集めてダンプトラックで海などに捨てていると、まさに水に溶かしている状況でございます。
このため、本市では「コンパクトシティ」ということで、一極型の集中都市構造を目指し「アウガ」を中核とした都市開発を進めてきてまいりました。しかしながら、一部報道がされておりますが、「アウガ」を運営しておりました第3セクターが経営に行き詰り、特別清算という状況になっております。このため「アウガ」の中のファッションテナントビルエリアは1階から4階まで空きスペースとなったところです。
一方で、青森市役所は昭和31年に第一庁舎が建設され現在に至っており、その建て替えが喫緊の課題でありました。このため、「アウガ」の空きスペースに市役所の機能を一部移転することで、1つに、市役所の建て替えに必要な経費約100億円を3分の1に圧縮することに成功しております。2つに、窓口に訪れる市民に、駅前での利便性の高い窓口を総合窓口として提供します。3つに、職員1,000人、来客数1日5,000人を数える市役所が駅前に移り、青森市の顔である青森駅前の賑わいの再生につなげるということで、一石三鳥の効果が実現しつつあります。既に一部は移転を始めており、来年1月には、市民課などすべての窓口部門が移転を完了し、リニューアルオープンを予定しています。
そして、青森市も「コンパクトシティ」一極型のまちづくりから、現在、立地適正化計画に沿って「コンパント・プラス・ネットワーク」として新たなまちづくりの考え方を進めております。この立地適正化計画と、それに伴う地域公共交通網形成計画におきましては、青森市の構造が、都市が陸奥湾を中心に東西に広がっており、また、合併した旧浪岡町は古都弘前市への宿場町であり、まさに白鳥が首を伸ばし翼を広げた形となっており、この成長するまちの形に合わせて、一極型の集中構造から多極型のネットワーク都市を目指すことをまちづくりのコンセプトとしています。
この「コンパクト・プラス・ネットワーク」のまちづくりを維持していくためには、都市内交通の円滑化を図り、利用者を確保していく必要があります。特に、世界有数の豪雪地帯である青森市においては、冬季においても安定した公共交通ネットワークを確保するための交通インフラの強化が重要となってきます。
このため本市では、都市基盤整備事業として、大きく3つの事業、青森駅周辺の整備や市内を東西に結ぶ都市計画道路3・2・2号内環状線の整備などの街路事業を進めているところです。また、新幹線新青森駅開業に向けて進めてきた石江土地区画整理事業については、来年度換地処分を予定しており、おかげさまで保留地の販売も徐々に進んでいる状況であり、停滞していたまちづくりが大きく進みはじめております。
特に、青森駅周辺整備事業については、青森県・JR東日本との連携により、現在青森駅自由通路と西口駅前広場を街路事業として整備しております。
かつて青函連絡船と鉄道駅を結ぶ北海道との物流拠点であった青森駅ですが、市街地は鉄路により東西に分断されております。その迂回路として、現在「あすなろ橋」という歩道橋を渡しておりますが、屋根が無く、特に冬場は大雪の中をバリアフリーなし、エスカレーター・エレベーター等がなく、ここを市民の方が歩くという不便を強いられております。現在、青森駅自由通路は、来年度(平成30年度)からの工事着手を予定しており、平成32年度の供用開始を目指しています。この自由通路完成により東西市街地の分断解消、駅舎整備と一体となったバリアフリー化、そして雨天・降雪時などにも快適な交通環境を提供することが可能となります。
また、現在の青森駅西口は、バスターミナルを有していないエリアであり、タクシーや自家用車と、学校帰りの学生などの歩行者・自転車が錯綜していることから、自動車と歩行者・自転車の動線を分離することが必要です。よって、自由通路の整備と併せ、西口の駅前広場を、バスや自動車などの多様な交通手段に対応するターミナルとして整備することとしており、来年度(平成30年度)に詳細設計に着手する予定としております。
西口駅前広場の整備により、新青森駅をはじめ市内の西部・北部方面とのアクセスを高めるほか、駅東口にある既存の交通ターミナル周辺の交通混雑の緩和についても期待しているところであり、この全体事業費は97.3億円を予定しています。
以上、本市でも青森駅周辺整備を始め、現在都市基盤整備に力を注いでおりますが、高齢者をはじめとした全ての皆様にとって、移動が円滑なやさしいまちを創出するということで、現在「コンパクト・プラス・ネットワーク」のまちづくりに努めております。こうした都市機能の強化に当たっては、安定した財源の確保が何より不可欠であります。そのために我々は、国に対し必要な額の確保を要望していかなければなりません。
それでは、大会決議文の朗読に入らせていただきます。
都市基盤施設の整備促進に関する決議案
都市基盤施設は、都市における円滑な交通を確保し、豊かで良好な市街地の形成を図るとともに、安全で快適な都市生活と機能的な都市活動を支える、最も重要な施設である。
人口減少や高齢化が進むなか、魅力あふれる地方を創生し、経済の好循環の波を全国に広げていくためには、コンパクト・プラス・ネットワークの実現を図る都市基盤施設の更なる整備を促進し、長期にわたりストック効果を発揮していくことが不可欠である。
また、相次ぐ台風・大雨災害により甚大な被害が発生していることに加え、切迫する巨大地震等に対応するため、都市基盤施設の整備により強靭な国土を築く必要がある。
人口減少や高齢化が急速に進行している中で、潜在的な成長力をより一層引き出すためには、社会全体の生産性を高め、個性あふれる地方の創生により経済の好循環を全国に広げていくことが重要である。都市基盤整備においても、真に必要な事業を推進するため、既存のインフラストックを有効活用するとともに、事業費の縮減に努めているが、平成二十九年度当初予算は、必要な額が確保されず、事業の進捗に支障を来すばかりでなく、民間投資にも悪影響を与えている。
今後の都市基盤施設の整備にあたっては、街路事業、連続立体交差事業や市街地整備事業の推進がより一層強力に図られるよう、次の事項について特段の配慮を強く要望する。
一、平成三十年度予算における都市基盤整備費については、都市再生や地域経済の活性化を核として、将来にわたり生産性向上などのストック効果が発揮できるよう、必要な額を確保すること。
一、交通渋滞解消による生産性向上や環境改善を図るとともに、災害時の広域的な救援・支援活動等を支えるため、幹線道路ネットワークの整備をはじめとする街路事業や連続立体交差事業を積極的に推進すること。
一、コンパクトなまちづくり、災害に強いまちづくり、国際拠点の形成及び良好な生活環境を実現するため、高い整備効果が期待される土地区画整理事業及び市街地再開発事業をより一層促進すること。
一、特に、組合施行等による市街地整備事業については、事業の進捗に支障を来すことのないように必要な額を確実に確保すること。
一、連続立体交差事業の計画的かつ円滑な実施に向けた安定的な予算枠を確保するとともに、より良い予算制度を検討し、併せて整備する関連街路等に必要となる予算枠を確保すること。
特別決議
「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(以下、道路財特法)の補助率等の嵩上げ措置は、豊かで活力ある市街地の 形成に取り組む都市にとって、必要不可欠な制度である。
しかしながら、この特例措置は平成二十九年度までの時限措置と なっており、補助率等が低減されることになれば、地方創生とともに社会全体の生産性向上に資する都市基盤施設の整備推進に、大きな 影響を与える重大な問題となる。
国民の社会経済活動を支える根幹である都市基盤施設が、今後も 継続的かつ安定的に整備が図られるよう、次に掲げる事項を強く要望する。
一、道路財特法の補助率等の嵩上げ措置については、地域の財政状況に十分配慮したうえで、踏切・通学路の安全対策など都市基盤施設の整備を通じて、魅力あふれる地方創生や強靭な国土形成を実現するため平成三十年度以降も継続すること
特別決議
本格的な人口減少・高齢化に伴い、既成市街地から居住や都市機能が撤退し、有効に利用されないまま空き地、空き家等が増加する都市のスポンジ化が進行している。
もとより都市基盤施設は、国民の社会経済活動を支える最も身近で重要な社会資本であり、都市が成熟の時代を迎える中にあっても、社会全体の生産性の向上等を通じて経済の好循環を生み出す推進力としての役割を担っている。
しかしながら、スポンジ化により無秩序な低密度化が進み、居住環境の悪化、地域活力の減退が進行すると、都市基盤施設が持つこのような機能は十分に発揮されることなく、コンパクトで災害に強いまちづくり、活力にあふれ、快適で安全・安心な暮らしの実現が困難となる。
このため、社会経済情勢の変化に的確に対応し、都市のスポンジ化という未曽有の課題に早急・確実に対処するための都市政策の展開を強く要望する。
一、低未利用地の利活用の促進など、地域において都市のスポンジ化対策が適切に講じられるよう、必要な制度の導入及び予算の確保を図ること。
右決議する。
平成二十九年十一月二十一日
都市基盤整備事業推進大会